ペルシャンローズ水 蒸留視察レポート
f0041769_1656508.jpg イランからローズウォーターについてレポートします。

世界ではじめてハーブ蒸留の技術をあみだしたのは、アビセンナ(アウィンケナ、本当はイブン=スィーナー)という中世の偉大な哲学者・医者・科学者。

科学史やアロマテラピーを勉強した人なら誰でも知っているエライ人なのですが、この人はペルシャ(今の国名はイラン)の人でした。

しかも、彼が初めて蒸留したのは、なんとバラ!

さらに、今でこそ薔薇の産地はブルガリアが有名ですが、ダマスクローズの原産地は実はイランです。

というわけで、
本家本元のローズウォーターを探せ!
というミッションをおびて、私達は今回わざわざ、とおいイランの国にまで行ってきたわけでございます。

前回は、我々が訪問した標高3000mのローズ農園についてレポートしましたが、

今回は、その農園で収穫したローズを使っての蒸留について書きますね。

 ↓ ↓



【ローズ水の出来るまで】

開花したての薔薇の花を早朝に摘みます。

店長杉も2日間農園に泊り込みで体験。
f0041769_213316.jpg

一個一個、素手で取りますので腕はトゲで傷だらけ。
高度3000mなので、ちょっと動くとすぐに息切れします。

摘んだローズを、蒸留所に運び入れます。
こちらの蒸留所は、山のふもと。
バラ農園から20kmの距離にあり、香りが変化しないうちに搬入可能です。

f0041769_21124423.jpg


ゴミを取り除きつつ、半日ほど陰干しした後、
摘んだ薔薇の花を釜の中に仕込みます。
香りが飛ばないように手早く作業します。

一回30kgのバラの花を仕込みます。
30Kgのバラの花って、想像つきますか?

バラの花一輪が何グラムか分かりませんが、
とにかく膨大な数の薔薇の花です。

(7/3追記: ダマスクローズの花の重さを調べました。一輪平均3gです。
ということは、30kg÷3g/輪=約10,000輪!)

f0041769_21131655.jpg


自分の両手に無数にできた薔薇のトゲの
引っかき傷を見ながら、
これを摘むのにかかった時間と労力を想像すると
気が遠くなります。

釜の底には敷地内の井戸から引いた
きれいな雪解け水が40L入っていますが、
バラの花が水に直接浸からないような仕組みになっています。

薔薇を仕込んだら準備完了。
釜のふたを密閉して加熱開始します。

かなり年代物の気合の入った機械(というか装置)で大丈夫かぁ?
と思ったのですが、新型の機械も買ったけど、昔ながらのこちらの
釜の方が、雑味がすくなく品質が良いローズウォーターがとれるので
わざわざ昔ながらの釜を復活させたとのことです。

f0041769_21193794.jpg


お米をたく要領で下から火をたくと、
中の井戸水が沸騰し、高温高圧の蒸気が
薔薇の花を包みます。

蒸気が花びらの間を通り抜ける際に、
バラの花の素敵な成分たちをさらっていきます。

薔薇成分を含んだ蒸気は、45度の傾斜のパイプを駆け上り、
そして頂点で一気に駆け下ります。

この角度がイイ!と工場長が力説してました。

f0041769_21414569.jpg


ところで、この工場長、我々が「一」を聞くと「十」くらい答えが帰って来るのですが、
通訳さんを通すと、それがまた「一」くらいになってしまうので拍子抜けしちゃいます。
なんか余計な関係ないことをいっぱいしゃべってたみたいです。

想像するに、こんな感じでしゃべってたのでは?

杉:「工場長、蒸留温度は花の状態によって変えているのでしょうか?」

通訳: 「?ﻡﻭﺩ ﻩﺠﺭﺩ ﺕﺎﻌﻤ ﺙﺤﺒﻤﻡﻭﺩ ﻩﺠﺭﺩ ﺕﻻﺩﺎﻌﻤ ﺙﺤﺒﻤ」

工場長: 「え~、お客さんの質問はですね、すごく面白い事をついてますよ!

Aと言う仮定の下にはこれこれこうだけど(中略)こうなんですね。

Bの状況だと、これこれこうになるんですよね、(中略)、ね!面白いでしょう?!


でもね、ほとんどの場合はそういうことは起きませんから、

答えはYes、ですね。

でも、こういう論文を読んだ事がありますよ!
エーと誰だったけ、あのフランス人の、(後略)。。。ですよ。

ですから、いろいろありますが、
Yes、とお答えするのが尋常でしょうな。」




通訳: 「工場長は、『はい』 といってます。」


杉: 「・・・・・」


f0041769_2142939.jpg


通訳さん、あいだの話も聞きたかったな~。

この仕事が本当に好きなのだそうです。
でも普段、仕事のことで質問してくれる人なんかいないので嬉しかったみたい。

     ***


釜の下ではローズ水を受け止める密閉容器が、
井戸水に浸って待ち構えています。
この容器の中に蒸気が飛び込んでくると、
一気に冷やされ、
ローズ成分を含んだ高温蒸気が水に戻ります。

これが、
ローズウォーターです!

この水蒸気蒸留という技術を開発したのが、
ここ、イランが生んだ著名な中世の科学者、アヴィセンナです。

湯気がコップに当たると水滴ができるのと同じ原理ですね。

早朝に高原の薔薇農園でただよっていたのと同じ、
あのさわやかで上品な香りが工場内をただよいます。
f0041769_16153270.jpg


工場を訪れるまで、ムンムンにむせ返るような
濃厚なバラの香りを勝手に想像していたので、意外でした。

そう、これが、ここで取れるローズウォーターの特徴なのです!

透明感と軽やかさ、さわやかさが特徴。
高原のバラ園を駆け抜ける風、みたいなイメージ。

あくまでも上品で雑味がない。
ふわっと気分を高揚させてくれる幸福感が特徴なのです。


さて、お茶を飲んで待つこと5時間、
ローズウォーターの完成です。

圧力釜と同じ構造なので、
いきなり開けると危険!

密閉容器を浸してある冷たい井戸水は
どんどん熱くなっていくため、
熟練した職人さんが手を浸して温度を見ながら
温度を調整します。

釜の温度を下げつつ、蒸留を終えます。

f0041769_21524146.jpg

(こちらの釜は精油用の別な種類のもの。)

先ほど、30Kgのバラの花と40Lの水、
とかきましたが、
今回、私たちはひと釜だけ特別に
30Kgのバラに通常の半分の20Lの水で
蒸留してもらいました。

要するに、ローズ成分を通常の2倍以上の濃度で
仕上げてもらったということです。

商品は来月発売します。
(追記:イランへの経済制裁、そして中東情勢のため、販売を断念しました。2013年1月)

私たちは今回、
同じローズ水でもさまざまなグレードがある、
ということを学びました。

蒸留時のバラの花の量と水の量によって、
出来上がるローズ水の濃度が決まります。

また、蒸留につかうバラの品種はほとんどがダマスクローズという、
オールドローズの一種ですが、そのダマスクローズでもいろいろ品種があり、
しかも産地や栽培場所によっても全然違う風合いに仕上がります。

同じ「ローズ水」という名前のものでもぜんぜん違うんですよ!
安いのはそれなりだし、高いのがいいかといえばそうとも限りません。

国際的な規格などはありませんので、自分の感性を信じて
実際に買ってみて試してみるしかないようです。

この業界の人ってこうやって、かなりのお金を無駄にしています。


ところで、蒸留が終わった後に大量のバラの花の蒸留かすが出ます。
湯気がでて熱々の蒸留カスを釜から出すのが一苦労。

残滓は、近所の農家からもらう堆肥と混ぜて熟成させてから
ローズの肥料として再利用するそうです。
無駄がなくていいですね~。
f0041769_1623595.jpg


また、苛酷な環境のため害虫がいないため、殺虫剤をまく必要がないそうです。

彼らとしては特別なことをしているとの気概はないのですが、
これは立派なオーガニック農法ですね。


f0041769_12434674.jpg


by sugitacp | 2008-06-26 16:36 | イラン 出張 | Comments(2)
Commented by 幸之助の母 at 2008-10-27 10:05 x
リピいたします~!!!!!最初使ったとき、驚くほどの香りで一気に大好きになりました。毎日癒されてます。
Commented by sugitacp at 2008-11-06 22:13
リピ宣言!
ありがとうございま~す。
クリスマスのローズブレンドも素晴らしいですよ。
<< チクワ夏ばて日記 久しぶりにチクワ >>